本を片手にあなたと恋を
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昼休み、真央を誘って屋上でご飯を食べる。
「ご飯食べ終わったら、一緒に1組に行ってくれない?」
「いいよー。」
「ありがとー! 鈴木くんに、本返したいの。朝、1組に行ったんだけど誰かと話してたから…」
「話してたから?」
本当に不思議そうに聞かれてうっと言葉に詰まる。
「声、かけられなかったの」
目を合わせないまま答えると、大きなため息が聞こえる。
「もー、何で? 人見知りにもほどがあるよ。本借りる程度には、仲良くなってるんじゃん!」
「人見知りは関係ないもん。なんか、ためらっちゃったの。それに、別に鈴木くんからって訳じゃないし。」
美桜は顔を真っ赤にしてまくし立てた。
「その感覚が私にはわかんないもん。声かければいいじゃんって思っちゃう、せっかく1組まで言ったならさ。」
「だってー。」
と少しいじけた美桜のほっぺを真央が両手で引っ張る。
「かわいいなー、美桜は。一緒に行ってあげるから。早くしないと昼休み終わっちゃうよ。」
「そうだね、行かなきゃ。」
「ていうか、あれ拓海じゃない?」
中庭を見下ろす真央のとなりに行くと確かにご飯を食べる拓海と和樹の姿があった。
「あ、ほんとだ。しかも、二人だけだね。」
「じゃあ、食べ終わっちゃわないうちに行こうか。」