本を片手にあなたと恋を

☆☆☆


「鈴木くん。」


今日は、作業に集中しているのかいつもよりも静かだと思っていたときだった。


手を止めて隣の美桜をみる。


「なに?」


「あのね、謝りたくって。月曜日。私、失礼だったよね?」


何がと言いかけて、思い出す。


「本返しに来たときのこと?」


「ちゃんとお礼も言わずに帰っちゃったから。」


お礼はちゃんと言われたとは思うが、確かに逃げてたなと思うと笑みが浮かぶ。


「いや。そんなに礼を言われるようなことでもないから 。」


そう言うと、美桜はまた困ったように笑う。

「それより、感想聞かせてよ。詳しく。」

と笑って見せる。


途端に目を輝かせて話始める。


「この、魔法が現代のなかにあるリアルさが好き。ノームとかガーゴイルが本物だったら、とかって考えるだけで楽しくならない?」

「分かる。近くに教会があるんだけど、ガーゴイル初めてまじまじとみた。動かなかったけど。」


ふざけて言うと真面目な顔で美桜が頷く。


「それは、残念。でも、教会とか家の近くにないなぁ。私もみてみたい、ガーゴイル。」 

「ガーゴイルを見に教会に行く人とかなかなか居ないだろうね。」

「というか、怒られちゃいそう。そんなこと言ったら。」

「確かに」

と顔を見合わせて笑う。



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