本を片手にあなたと恋を
実はこの前も、彼が前に借りていた本が気になり読んでみた。その本は美桜の好みド・ストライクで夢中になったのだ。
だから、今日も同じ作者さんの本を借りようと思って図書室に来たのだ。
カウンターに並ぶ彼が持っている本のタイトルが気になるけれど、ここからではよく見えない。
あまり、ジロジロ見るわけにもいかず諦めて本を探すことにした。
美桜は、本が好きだ。
だからこそ、小学校の頃からずっと図書委員をしているし、
よく家族に美桜は本を読んでるとなにも聞こえなくなるって言われてしまう。
本を一度読み出すと止まらなくなってしまうのだ。
分類番号910の日本文学のあ行の棚、心のなかでそう呟きながら探していた名前を見つけた。
図書委員としていつも整理しているお陰で本を探すのは早くなった。
“ひとかけらの魔法”
そのタイトルに引かれて一冊の本を手に取り読んでみる。
ちょっとだけのつもりが、いつの間にか本の世界に引き込まれていった。
「すみません。」
控えめにそう言う声が聴こえたような気がした。