本を片手にあなたと恋を

今度の生徒も、本を返すとすぐ帰っていって、図書室は静寂に包まれる。


「…、ごめん。忘れて。ちょっと気になっただけだから。女子とそんな話したことなかったし。」


「あ、もしかして女子としての一般的な意見を求めてた?」


拓海はやっぱり困った顔で躊躇ってから頷いた。


自分のタイプを聞かれたと思っておろおろしてたのが何だか恥ずかしい。

「それなら、私だと参考にならないかも。あんまり、恋バナとか聞かないからな。でも、やっぱり優しい人とか面白い人じゃない?」


なにも答えない拓海をよそに話続ける。


「私的には、前借りた本のカップルが理想だなぁ。なんか、お互いの空気が一緒で背伸びしてない感じ。ほら、覚えてる?彼氏の家で、ピクニックみたいにハンバーガー食べながら、古い映画一緒にみてたシーン。」

「覚えてる。」


「あーゆーのいいなって思う。あ、タイプとはちょっと違うか。でも、あんな風にただ、くっついて本読んでたまにおしゃべりとかするデートっていいなって思うの。」


考えたことをそのままに、口にだしていた。

勢いに任せて、余計なことまで言ってしまった気がしてますます恥ずかしい。

ふと、拓海が動いてつられて顔を見上げると、ふっと笑っていた。


「なんか、想像できるわ。佐々木っぽい。」


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