本を片手にあなたと恋を
「…、今更だけど私、めっちゃ恥ずかしいこと言ったよね? 忘れて、ほんと。」
「いやいや、忘れるのは無理だろ。それと、いやに具体的だけど相手も思い浮かべてたりする?」
「相手!? 」
もちろん、頭に浮かぶのは目の前の人の顔。
もう、これ以上顔が赤くなることはあるのだろうかなんて思ってしまう。
「誰のこと、考えてる?」
さっきまでの、からかうようなトーンが変わって少し戸惑う。
まっすぐと目を見つめられて、目をそらしたくなる。
切なくなる目。
「だ、誰とか…。」
「絶対、今思い浮かべただろ。」
「それは、」
「俺じゃ、駄目なわけ?」
「え、?」
そらしかけていた目で思わず拓海を見つめてしまう。
一瞬、なんて言われたのか理解できなかった。
「俺、佐々木が好きだよ。」
鼓動がどんどん早くなっていくのを感じる。
夢を見ているのだろうか。
もし、熱が出たら絶対に君のせいだから。
「俺と…」
「私と付き合ってください。」
口を開いた拓海と被せるように言うと、途端に拓海が真っ赤になった。
「私も、鈴木くんが好き。」
「さ、佐々木、それマジで? 」
こくりと頷き、拓海にもう一度尋ねる。
「付き合ってくれる?」
「もちろん、というかむしろお願いします。」
「こちらこそ。」
と二人でペコペコすると、同時に笑った。