本を片手にあなたと恋を
☆☆☆
「おめでとう。」
拓海の顔を見るなり和樹が言った。
土曜日の朝、部活がないと聞いて今度は和樹の部屋に来ている。
昨日の出来事を話すために。
あのあと、気がつけば下校時刻間近で慌てて片付けたあと美桜を家まで送った。
和樹には、メールしようかとも思ったけれど、結局止めて今に至る。
「何で、知ってる?」
「真央に聞いた。」
「情報、早くね?」
「むしろ、昨日のうちに教えてほしかったなぁ。俺のアドバイスのお陰なのに。」
「それは、感謝してる。けどさ、今思えば好きなタイプ聞いてる時点でコクったようなもんで恥ずかしい。」
『コクるのが無理なら、とりあえず好きなタイプ聞けば?』
そう、そそのかされて、金曜日に美桜に尋ねた。好きってことは、伝わらなかったが。
「言う前に、気づかないところが流石。」
「それは、しょうがないだろ。」
「慣れてないもんね。」
事実、告白するのは初めてで返す言葉が見つからない。
「お前だって、自分の恋愛には奥手なくせに。」