「僕はずっと前から君を知ってるよ」
「莉々葵ー」
お兄さん?
螺旋階段の下からお兄さんがわたしの名前を呼ぶ声がした。
「夕飯だぞー?」
あ、そっかもう7時か。
「はーい、すぐ行きます」
夕飯ができると、わたしを呼ぶのは、お兄さんと決まっている。
お姉さんはわたしが嫌いだから。
カタン…
フォーク、スプーン、ナイフが次々とテーブルにセットされる。
わたしもなにか手伝おうとキッチンに行く。
「あの、おねえ…」
「ああ、結構よ。もう準備終わるから」
最後まで言葉を続けようとするも遮られては終わりだった。
なんでもいい。
なんでもいい、だから、少しでもいいから。
些細なことで構わない。
お姉さんと話がしたかった。
それだけなのに。
どうしてーーーーーーー。
「いただきますっと、お、うまそーだな!なっ、シャーロット!」
お姉さんは一時的にお兄さんに目を向けるもーーー、それを無視する。
「…いただきます」
わたしは最初に硬そうなフランスパンに手を出す。
スープをのみながらパンを口に入れる。
「莉々葵。
おまえの父さんがーーー、玲斗がこのスープを好きだったんだよ。」
「…そうですか…。」
優しい味のスープ…。
これを父が…好きだった…。