「僕はずっと前から君を知ってるよ」

「あいつ、そこまでフランスパンは好きじゃなかったみたいだけどな。」


「…意外ですね…」


「うーん?そうかぁ?

あいつ少食でさ、全然食わねぇんだよ。ははっ」


お兄さんは楽しそうだった。

父の話をする、お兄さんは楽しそうだった。


「それで?

おまえ、学校の方はどうだ?楽しかったか?」


「えと、はい…。

楽しい、ですよ」


嘘ついた。

学校なんてたのしくない。

父を知らない人なんていないくらい、父はとても有名なピアニストだった。

それくらい有名なため、学校に行けばわたしは話題の的。

父の娘のわたしを良く思う人ばかりではない訳で。


「友達のひとりや2人、連れてこいよー莉々葵ー」


「あ、はい…」


「まぁ、あいつ、女友達しか家連れてこなかったよなぁ?」


「…そうね。」


「おまえは逆か?男か?」


はははっ、と笑う。

笑えません。お兄さん。

もう止めて。

お姉さんがーーー。




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