「僕はずっと前から君を知ってるよ」
そしてお兄さんが車を駐車している時のこと。
「ヴァイオリン、あいつの部屋にあるんだ。」
「えっ、そうなんですか…。じゃあ、駄目ですね…。大丈夫です、あきらめますから」
お兄さんはわたしのおでこをぱちん、とデコピンをする。
ーーーーーっうあう!?
ひぁい!!!(いたい)
「ななななんですか!?」
「おまえはすこし、控えめすぎんだよ。
莉々葵のお父さんのヴァイオリンなんだ。
おまえのものだよ」
「わたしのーーー?」
お兄さんはわたしに優しく微笑んでくれた。
「オレがとってきてやるから、安心しろよ。
なにかあいつに言われたらオレが言っとくから」
あいつ、と言うのはお姉さんの事だろう。
ヴァイオリンをわたしがもっていると聞けばお姉さんは黙ってはいないだろう。
でもわたしはヴァイオリンを東の塔に持ってかなきゃいけない。
あの青年と約束をしたから。