「僕はずっと前から君を知ってるよ」
「ねぇ、この東の塔ね、僕にとってはすごく思い出ある場所なんだよ」
「そう、なんですか…」
この人、わたしたちが、住む前に住んでた人ってことなのだろうか?
でも、東の塔はお父さんのお母さんが好きで建てたらしいし…。
じゃあ、この人は誰ーーーーー?
わたしは不思議になりながらも追求したりしなかった。
「なにを弾いて欲しい?」
「え?」
青年ーーールーフェスはヴァイオリンをケースからだし、弾こうとするではないか。
得意なのかな…。
「カノンーーーー」
カノンはお母さんが好きでお父さんによく弾いてもらっていたらしい。
だからか、わたしも好きになったのだ。
ーーーーーーー♪
柔らかい。
優しい。
懐かしい。
わたしの欲しい、何かが、詰まったヴァイオリンの、奏でる音色にわたしは引き惚れる。
なんでだろうーーーー