「僕はずっと前から君を知ってるよ」

お母さんはコーヒーを飲みながら楽しそうに話してくれた。

お母さんとりりのお母さんはとても仲がよかったこと。

事故の時、おなじ当直だったのに、一緒にいたのにルリさんを助けられなかったことも。

泣きそうになりながら話してくれたのだ。



「結城くんね、莉々葵ちゃんひとり残して死ねないってずっと言ってたのよ。

莉々葵ちゃんまだ小さいからって、僕がいてあげなきゃいけないって。
もう、ルリもいないから、父親の僕だけでもいてあげなきゃいけないって。

まだ莉々葵ちゃんになにもしてあげれてないって。

泣いてた。

どんなに悔しかったのかわからない。
毎日毎日衰弱していく結城くんを見てなにも私は言えなかったのよ。
医師だったのに。

あまりにも結城くんが短な人だったから、死んだ、ってことが私もすぐには理解できなかった。」


お母さんはとうとう、泣き出した。

顔をぐちゃぐちゃにしてでも話してくれた。

まるで、私が知らなくてはならない、ように。
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