「僕はずっと前から君を知ってるよ」
父の命日は、秋だ。
お姉さんは命日になると、朝からでかけ、ほとんどその日は父のお墓の前で過ごす。
どんな話をしてるのかはわからないが。
こぽぽ……
紅茶を煎れる音。
お姉さんは紅茶が大好きだ。
…お父さんもよく、わたしにタルト作ってくれたな…。
やめよう。
お父さんのこと思い出してもわたしが辛くなるだけ。
忘れればいい。
もういないんだからーーー。
「ミルクティー?オレンジティー?」
「み、ミルクで…お願いします…」
お姉さんは顔を上げ、ちらりとその細い碧眼でわたしを見た。
ーーーわたし何かしましたか。
ごめんなさい、お姉さん…!
なぜか謝る。反射的になのかな…。
「あの、お姉さん…っ!
そのっ、聞きたいことがーーー」
「何?」
うっ。
その眼が苦手なんです。お姉さんの。
お姉さんは外人さんなので、金髪碧眼である。
どこの国かなんて知らない。聞けない。
「わたし…っ、夕方!庭に行ってきます…、東の塔の方にーーー」
「そう。
勝手にしていいわよ。とくにあなたがすることに言うことはないわ。」
「はは、ですよね…」
心配とか、お姉さんはしてくれない。
そんなの当たり前だ。
わたしはお姉さんの子ではないから。
知らない子の娘なんてどうでもいいはずだ。