セクシーな女神・ゴーインな戦士
私は両足を失った。

あれから毎朝、ママはどんな日でも、

病院に来て着替えさせてくれる。

自分でオペのことを言い出せなかったのを恥じてるみたい。

おかげで、看護師さんから

『ファッションリーダー』というアダ名を付けられた。



窓の外を眺めながら、すごい早さで季節が移ってゆくのを見た。

だけど、ここは暑くも寒くもない。


昨日、学校の先生が来た。


「誰が悪いっていうのは、ないと思うんだ…」


言い訳のように言ったのを、ただ黙って聞いていた。

ジョゼの話では、あの騎馬隊5人は、それぞれに言っていることが違うらしい。


「後ろにいたので、前に従っただけ」

「昔の動画を見て、人がはね飛ばされると盛り上がっていたので、そうしようと全員で決めた」

「最初に一騎ツブして、別の騎馬隊に加勢する作戦と誰かから聞いた」

「大宮くんが主将なのが、気に入らない人がいて…ジブンではない。誰だったか、今は思い出せない。そうじゃないかも知れない」

「自分は副将をツブすと聞いていた。女の子しかいなくてビックリしたけど、止まれなかった」



私以外にも腕を骨折した女の子がいた。

スポーツディは、あのまま中止になった。

大宮に投げ飛ばされた生徒は、自主退学して、もう連絡がつかないらしい。


だけど、私は覚えてる。

あの騎馬隊の顔を。

みんな楽しげに、歯をむき出して、

一直線に突っ込んで行った表情を。


逃げても、しょうがないのに。

一周して、自分自身に戻ってくるだけなのに。



かわいそうに…とまでは思わないけど、

あの浅はかな笑顔を思い出すと、哀れな奴らだと思った。


これから、きっと自分でも気づかないうちに友だちが離れていく。


ヒルデガルド出身だって、一生胸を張って言えなくなる。


同窓会にも行けない。




……私がそうだったから。
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