セクシーな女神・ゴーインな戦士
大宮が突然やってきたのは、もうその翌日のことだった。


「リハビリは?」

「二時から療法士さんが来る」

「俺も付き合う」

「必要なし」


ジョゼが次々に料理を運んだ。


「父上、こんなゴジラに出さなくていいよ」

「だいじょーぶ。いっぱいあるよ~」

「チチウエ……?」



ジョゼが『父上』って呼んでほしいって言うんだもん。


「オマエ、父親だって言えよな…恥かかせやがって」

「あ~あ、部屋が狭くなる」

聴こえないふりで、テーブルへ移動した。


「何十畳あるんだよ、このリビング」

「アンタ、部活は?」

「日曜は練習禁止」


こんなところに居ていいの?


卒業したらアメリカの大学に行くって、

去年インタビュー記事を読んだ気がする。



私には関係ないけど…



大宮が、恐ろしい勢いでタコスを平らげ始めた。


「うっめぇ!コレやっべぇ」


ジョゼが笑顔で言う。

「アメリカの料理マズイ。メキシコ料理はオイシイ。チャイナもいいね」

「そうか。飯が合わなかったら、そうするか」

と私を見た。


「え?」

「アメリカで飯が合わなかったら…」

「なんで私がそんな心配しないとイケないの?」

「卒業したらアメリカ行く」

「行きなよ」

「オマエも来るんだよ」


は!?

慎重に食べていたタコスが、ボロボロこぼれた。


「いかないよ…?」

「だって、ヒマだろ」

「ヒマ!?ヒマってなに?ヒマな健常者がこの世には溢れてるのに、なんでワタシ!?」


ジョゼが目を見開いた。

「おお、いいカンガエ。でもサミシイヨ~」


もう決定みたいに言わないでよ!


「向こうはノーマライゼーションの先進国だ。問題なし。お代わりください」

「なんだろうが関係ない!私にはカンケーナイ!ちゃんと噛んで食べてる!?」


大宮がニヤついた。


「それが本性だろ」

「はあ?」

「クールなふりして、バッカみてぇ」



手の中で、具がグチャリとつぶれた。
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