セクシーな女神・ゴーインな戦士

うわぁ………

来ちゃった。



まさか、また来ることがあるなんて。



こんな体になってるなんて。




学校は日曜日だったけど、部員の掛け声や、監督の怒号が聴こえてくる。



知ってる人に会ったらどうしよう。

そう思うと、手が動かなかった。



大宮は何も言わずに、校門の前で立往生する私の横にいた。

正賢学園名物の「優勝垂れ幕｣が、校舎を覆いつくしていた。


ーーインターハイ優勝ーー

ーー全国大会W優勝ーー

ーー全階級制覇ーー



その中に懐かしい名前があった。


思わず車椅子を進めた。




ーー当校卒業生　矢倉直弘くん　全豪オープン優勝ーー



「そっか…｣

思わず言った。


ぜんぜんテレビ見たくなくて、知らなかった。


その横に、信じられないものを見た。


ひときわ大きく、

太い垂れ幕。


体育会系の学校で、

その幕だけ別格で輝いていた。





ーー悲願達成　京都大学　現役合格　香田清子さんーー



悲鳴とも歓声とも付かないものがこぼれ出て、口に手をやった。

懐かしい元親友の名前がそこにあった。


大宮が私を見た。

和やかな目だった。



知ってたのかもしれない。

そうだ、きっと。



創設者の朝比奈次郎は軍人だった。

戦争が終わった後、体育教師になったんだけど、

日本人が軟弱になってゆくのに耐えられなくて、この学校を作った。


本当は、自分の学校から東大と京大進学者を毎年出すのが夢だったのに、

軍人時代のくせが抜けなくて、校則がムチャクチャ厳しかったから、

退学者が大量に出て、そのまま二度と学力は戻って来なかった。