一番星のキミに恋するほどに切なくて。《改装版》
「…俺は、秋武 蓮(アキタケ レン)だ」
蓮さんはあたしに手を差し出す。あたしはその手をじっと見つめた。
………握手…?
「……蓮…さん……?」
あたしが小首を傾げていると、蓮さんはため息をついた。
えっ!?蓮さん、ため息ついてる?あたし何かしたのかな……。な、何したんだろう…。
もんもんとしていると、蓮さんはもう一度ため息をついて、口を開いた。
「………俺の所に来い」
…………え?
一瞬時間が止まってしまったような気がした。急いで頭をフル回転させる。
俺の所に来いって……。それってどういう意味なのかな…。まさか…って…ど、どうしようっ!!
助けた見返り!?
あれこれ考えていると、蓮さんは小さく笑った。
「…何もしないから安心しろ。ガキに興味は無い」
はっきりそう言われてしまった。自分の顔が熱くなってきたのが分かる。勘違いをした自分が恥ずかしい…。
それに……ガキって言われた…。あたしもう高校三年生なのに…。
シュンとしていると、蓮さんは、困ったように頭の後ろをガシガシッと掻いた。
「…そんな顔するな。対応に困る」
心底困ったような顔をする蓮さん。それはがなんだか…。
「……ふふっ」
無表情を崩して、困った顔をする蓮さんが可愛いくて小さく笑ってしまった。
「…笑うな。ほら、どうするんだ?」
笑ったのがバレてしまったのか、咎められてしまった。それから、蓮さんは差し出したままの手をさらに前に出す。
「一緒に、行きたい」
蓮さんについて行ったら、何か変わるのかな。
大切な人達を、大切と思いながらも遠ざけるしかなくて。大切にされる度に辛くなる。
あたしその手をとった。そんなあたしに蓮さんは小さな笑顔を浮かべる。
「夢月」
星が霞むような眩しいネオンの町で、あたしは、蓮さんと出会ったのだった。