一番星のキミに恋するほどに切なくて。《改装版》
「…お前は…変な奴だな」
「…えっ!?」
突然何を言い出すかと思えば、変な奴だなんて…。
軽くショックを受けていると、「違う」と言って後頭部をガシガシと掻く。
「……良い意味でだ。お前は、いつも気づいたら傍にいる」
なんでだろう…蓮さんの声がいつもより優しい。
「…最初は…ただの同情と好奇心だった。ほっとけないって思ったし、面白そうだったからな…お前」
「…ええっ………」
面白い、そんな理由であたしを拾っちゃう蓮さんの方が…変な人だと思います。
あたしは心の中で呟いた。
「…俺は…人が嫌いだ。人が人に近づくのは、自分の利益、欲のためだろ。だからいつも一線を置いてきた」
海の地平線を見つめながら蓮さんは言葉を紡いでいく。
初めて蓮さんから自分の事を話してくれている。だからあたしも…しっかり受け止めよう、そう決めた。
「…俺は、財閥の後取りで、もうすぐ親父の会社を継ぐ事になってる。生まれた時から決まっていた自由の無い人生だな」
海を見つめているはずの蓮さんは、もっと遠い、どこかを見つめているように思えた。
「だから、高校までは自分の好きなように生きていいっていう約束で、卒業してからは、毎日会社継ぐための引き継ぎやらなんやらで俺の意志なんて無視で働かされてる」
辛そうに顔を歪める蓮さんの話を黙って聞いていた。
財閥…お金持ちの家だよね。決められた道を歩かなきゃいけなかった。自由に生きられない運命なんだって…ずっと苦しんできたんだ。