一番星のキミに恋するほどに切なくて。《改装版》
「暴走族に入ったのは、親父への抵抗だった。まぁ、いつの間にか総長にまでなって…あいつらと出会って…。あいつらは、利益や欲を考えない、ただ仲間の事を大事にする真っ直ぐな奴等だった」
狼牙の仲間の事を考えているんだろう。蓮さんは笑顔を浮かべていた。
「………蓮さん……」
「でも、俺もそのうち、親父みたいに、会社の利益にしか考えられならない人間になっていくんだろうな」
寂しそうに呟く蓮さん。あたしに…何か出来る事はないのかな。こんなに苦しんでる、蓮さんにしてあげられる事……。
「………蓮さん……」
蓮さんの左手を自分の両手で握りしめる。蓮さんの手は、やっぱり冷たい。
「蓮さんは利益や欲だけを考えて生きているような冷たい人間にはならないよ」
だって、あたしにすごく優しくしてくれた。
「…狼牙の人達があんなに仲良くて、仲間を思えるのは蓮さんが総長だからだよ。蓮さんがいたから…みんなついてきたの。不器用だけど優しくて…誰よりも辛い思いをしてきたからこそ…蓮さんは優しい蓮さんのままだよ。何があっても変わらない」
「……俺は…そんな優しい人間じゃない。変わらないなんて言い切れないだろ。人はいつか変わる。時間が経てば経つほど…」
「…たとえ…たとえそうなったとしても、蓮さんには皆がいるでしょ?」
狼牙の皆がいる。蓮さんが迷った時は必ず助けてくれる。
「蓮さんは、一人じゃない」
蓮さんは目を見開いたままあたしを見つめていた。
どうか…あなたの傍には皆がいる事が伝わりますように。そんな思いを込めて蓮さんを見つめ返した。