一番星のキミに恋するほどに切なくて。《改装版》
「…夢月」
唇が離れたけど、蓮さんとの距離は鼻先がぶつかりそうなほど近い。
「…好きだ…夢月…」
あたしの頬を両手で包み込んだ。熱のこもった瞳で蓮さんはあたしを見つめてくる。
「あたしも…好き……」
なのに、あたしは自分の気持ちに迷いがある。
いつか、蓮を置いていくあたしは、無責任でしょうか?死んじゃうのに…。蓮さんとずっといる事なんて出来ないのに………。
「…あたし………」
このまま流されても、蓮さんをここで手放しても、どっちも辛いことには代わり無い。
どうすればいいの?
「…夢月が何かを抱えてるのは知ってる」
「え……」
蓮さんの言葉に、何を言われるのかと不安になり、動悸がする。
「お前も1人じゃない、夢月。だから、夢月も諦めるな」
「っ!!」
その言葉に、涙が溢れた。
蓮さんは、人生を。あたしは、命を。1人じゃないから、諦めるなと言ってくれているのだと思った。
「…何も言わなくてもいい、でも、辛くなったら俺を頼れ」
そう言ってあたしの涙をぬぐう蓮さんに、あたしは泣きながら頷く。
「それと……」
蓮さんはそっぽを向いて罰が悪そうに後頭部をガシガシと掻いた。
蓮さん…?どうしたんだろう。
「……て悪かった…」
「………え…?」
強い風が吹いたせいで蓮さんの声が聞こえない。
「急に、キス…して悪かった」
そう言った蓮さんの頬は、少し赤かった。
「…あっ……」
改めて言われると…恥ずかしい……。
あたしの顔も真っ赤なんだろう、蓮さんは困った顔をしている。
蓮さんならこういうのに慣れてるのかと思ってたけど…。
そうじゃなかったんだ…。そんな蓮さんを知れた事が嬉しかった。
「…行くぞ…」
蓮さんはあたしの手を引いて、起こしてくれる。
少しずつ変わっていく。季節が変わるように、時間が進んでいくように…変わらないモノなんて絶対に無い。
あたしと蓮さんの関係も…。ただの居候から、大好きな人に変わり始めた…。