一番星のキミに恋するほどに切なくて。《改装版》
「こうして、改めて会えて嬉しいよ、蓮くん」
豊さんは、人懐っこい笑みで、蓮に手を振る。それに、ホッとしたように肩の力をぬく蓮。
「はい、お久しぶりです」
蓮と豊さんは、病院で何回か顔を合わせているからか、自然に会話は出来ているみたいだった。
「こんな日が来るなんて、嬉しいよ」
「豊さん……」
豊さんは、少ししんみりとした様子で、あたしと蓮を見つめた。
「蓮くん俺はね、夢月ちゃんを守ろうって決めたのに、何ひとつ、夢月ちゃんの為に何も出来なかったんだ…」
「豊さん、それは…」
「夢月ちゃん、聞いて」
豊さんはあたしの言葉を遮って、話し始める。
「あの日、世界で1番大切な人達を失った夢月ちゃんは、生きる希望を失ってしまったのだと思った」
それは、あたしのママとパパが死んでしまった日の事だ。
「失った分だけ、この子を愛そう。そう思って俺なりに、大切にしてきたつもりだった」
そう、豊さんは誰にも望まれないあたしを引き取ってくれた優しい人だった。
「でも、夢月ちゃんの心を、埋めてあげる事は出来なかったんだ」
「そうだな……結局、俺達も腫れ物に触るみたいに、傷だらけの夢月に触れられなかった。遠ざけるしか、出来なかったんだよ」
豊さんの言葉に、初めて喜一お兄ちゃんは声を発した。
あたしは……。
あたしのせいで2人が悲しい顔するから、それが辛いって、近づく事を恐れてた。
あたしは、いつも自分だけが不幸のような、そんな気でいたんだと思う。