一番星のキミに恋するほどに切なくて。《改装版》
「…うー…奥の手だ」
とか言ってるけど、毎朝使ってる。
そーっと蓮さーんの首筋を撫でた。蓮さんは首が弱い。蓮さんと暮らしているうちに見つけた弱点だ。
「…っ!?……」
ーバサバサバサッ!!
「…っ!!」
この通り小さな悲鳴と共に飛び起きた。息を切らしてあたしを睨みつける。
「…夢月……お前……」
「はーいご飯だよ!」
あたしはご飯をよそって机に並べた。
「……その起こし方、なんとかしてくれ」
蓮さんは深いため息をついて机の前に座った。
そう言いながら、怒らない蓮さんは何だかんだで優しい。
朝食を終えてすぐに、蓮さんはスーツに着替えを始めた。
「今日はスーツなんだ?」
蓮さんは仕事の時、私服で行くことが多かった。だけど、今日はなぜかスーツだ。
「…あぁ……。すぐ帰る」
なんだか憂鬱そうな顔にあたしは首をかしげる。
仕事、嫌なのかな。どんな仕事をしてるのか、前に聞いたことあるけど、ただのサラリーマンとしか教えてくれなかった。
……何か、訳があるのかも。
「大丈夫??」
「…あぁ、大丈夫だ。ありがとな」
ポンポンとあたしの頭を優しく撫でて、家を出て行った。
蓮さん…最近元気ないんだよね。
「どうか、蓮さんが辛い思いしませんように……」
それだけを願いながら後片付けを始めた。