ドラマ好きの何が悪い
カイトは私を抱いたまま、足を使って器用にトイレの引き戸を開けた。

そして、そのままゆっくりと便座に私を下ろした。

不思議と痛みはあまりなかった。

「パンツ脱げますか?」

カイトは私の顔を見下ろして、わざとらしく真面目な顔で聞いてきた。

「なんとかしますんで大丈夫です。」

「じゃ、俺は出たとこで待ってるわ。何かあったら呼んで。」

「うん、ありがとう。助かる。」

カイトはそう言ってトイレの扉を閉めた。

ふぅ。

ようやくトイレにたどり着いた安心感と、さっきのお姫様抱っこの居心地のよさにしばらく動けなかった。

カイトの腕や手はシュンキと違ってとても太くて、そして熱かった。

これはお酒のせいだと思うけどね。

痛みと闘いながら、ようやくトイレが済んだ。

こんなにもトイレが大変だなんて!

一つ一つの動作が、信じられないくらいに苦しかった。

一息つくと、

「カイト、ごめん。よろしく。」

と外に向かって言った。

少しして、カイトが扉を開けて入ってきた。

そして、またふわっと私を抱き上げる。

「一応さ、布団敷いといた。座ったまま一晩過ごすのと、どっちが楽かなと思って。」

私がトイレしてる間に布団まで敷いてくれたの?

カイトの顔を見た。近い。

カイトはそのまま敷いた布団の上にゆっくりと私を横たえた。

「ありがとう。」

そう言ったのに、カイトは私の首の下の自分の腕をほどこうとしなかった。

私の上から覆い被さるような体勢になってる。

「ありがとう。」

少し焦ってもう一度カイトに言ってみた。

「あ、うん。痛みは?」

カイトはまだ同じ体勢で聞いてきた。

いつになく優しい目をしていた。

「大丈夫そうだわ。朝ひょっとした起き上がれないかもしれないけど。」

「俺がずっと一緒に寝ててやろうか?」

「は?」

本気なのか冗談なのかわからなかったけど、カイトは真面目な顔をしていた。

カイトの片手が私の髪をなでた。

「何?」

「キスしていい?」

「やめてよ。」

そう言ってカイトの体を払いのけようとするも、腰が痛くて身動きがとれなかった。

カイトの顔が次第に近づいてくる。

「カイト?!」
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