ドラマ好きの何が悪い
「ごめん。」

そう言って、カイトの体は私からゆっくり離れた。

「離れないで。」

離れていくカイトの腕を掴んで、思わず小さな声でそう言っていた。

自分が自分でないみたいな感覚。

「お前、どうしたんだよ。あれから何かあったか?」

「・・・あった。」

私はカイトの腕をぎゅっと強く握った。

「とりあえず、リビングでゆっくり聞くよ。」

カイトは力の入らない私の体を支えながらリビングに向かった。

ソファーに座る。

カイトも私の横に座った。

「何か飲む?」

立ち上がろうとする私を遮って、カイトは立ち上がった。

「俺入れてきていい?ミナミ、ふらふらだからさ。」

カイトは敢えて明るく言った。

キッチンの勝手もわかってるカイトは、お湯を沸かした。

「俺、とりあえずコーヒーもらっていい?お前は何か飲む?」

「お水でいいわ。」

「おう。じゃ入れていくよ。」

「なんか、カイトの家みたいだね。」

「半分同居みたいなもんじゃんか。」

「何馬鹿いってんの。」

そう言いながらも、久しぶりにカイトと家で話してるこの状況は自分でも驚くほど安心感があった。

カイトはコップにお水をなみなみと入れて私に手渡した。

「これ、こぼれそうなほどいっぱい過ぎやしない?」

思わず吹き出した。

「いっぱい飲むだろうと思ってさ。」

「いっぱい飲むって言ったって、これはないでしょ。」

私はすれすれに入ったお水を口に含んだ。

「ありがとう。」

カイトは自分のコーヒーを入れて、ソファーの前のテーブルに置いた。

「よっこらしょ。」

と言いながら私の横に座る。

「座るとき、そんな言葉が漏れるようならもうおじさんだね。」

「うるさい。」

カイトは笑いながらコーヒーを飲んだ。

「で?何があった?」
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