ドラマ好きの何が悪い
4章 モテル女と女好き
「へー!いいじゃん!そのイケメン研究職男。いっちゃえいっちゃえ!」

ハルカはくりんとした大きな目を更に大きくして、ニヤニヤ笑った。

「いっちゃえいっちゃえって簡単に言ってくれるけど、そんな年齢でもないしね。」

チーズをつまみながら、ワインを一口飲んだ。

「でもさ、よく考えて!ミナミ先輩の年齢でそんなイケメンと出会うことなんて、なかなかないんだから。ここで逃しちゃったら、次出てくるかわかんないわよ。」

「わかんないけどさ。」

そうは言うけど、そんなに軽はずみな行動がとれないのがアラフォー独身世代なわけで。

「携帯番号とかメルアドとかって聞いてないの?」

ハルカは尚も楽しそうに続ける。

「カイトから、教えてもらったけどね。」

「じゃ、速攻連絡とらなくちゃ。時間経つととれなくなっちゃうよ。」

「いきなり私から連絡とるのも変じゃない?」

「そう?」

「そうだよ。速攻連絡したりしたら、かなりガツガツした男に飢えてるっぽくみられるのも嫌だしさ。」

「そうかな?自分のことよほど気に入ってくれたんだって、喜ぶんじゃない?相手だって結構いい年齢だし。」

「でもさぁ・・・。」

ハルカは、煮え切らない私を見て、少しイライラした顔をした。

「こないだは、おすすめ物件紹介してもらえるって小鼻膨らましてたじゃない!あの威勢はどこ行っちゃったの?」

ああ。

あの時はねぇ。想像だけの世界だったから。

私の理想の出会いや恋愛ってのもあるのよ。

連絡先教えてもらって、速攻連絡して、一回くらいデートして、そのまま疎遠になるなんてこと、若い頃嫌ってほど体験してきた。

その二の舞をこの年齢で踏みたいとは思わないわけで。

確実かつ、運命的な衝撃がほしいの。

まるで、ドラマみたいな。

イライラしているハルカの顔を見つめながら、いつもより生真面目な顔をして言った。

「多分ね。私がいっちゃえないのは、相手との縁があるかどうかがわかんないから。きっと、縁があればこっちから連絡とらなくったて、また会う機会は訪れると思うの。」

「どんな風に?」

「例えば・・・、仕事帰りに寄ったバーで偶然隣に座ってたとか。一人で見に行った映画館でばったり同じ映画を一人で観に来てたとか。」

「なにそれ。ドラマのシチュエーションじゃん。」

「例えばの話よ。ドラマみたいにうまくいくとは思ってないし。」

うまくいけばいいなとは思ってるけど。





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