ドラマ好きの何が悪い
「今からでも遅くないですよ。」

そういうハルカの表情は、微妙に寂しそうに見えた。

カイトが口を開いて何か言おうとしたとき、それを遮って体を前に起こす。

「結婚するなら、こないだ紹介してもらったシュンキの方がいいわ。」

どうしてそんなことを言ってしまったのか分からない。

ただ、ハルカの寂しそうな顔を見ているのが辛かった。

そして、カイトが次に何かを言うのを聞きたくなかったからかもしれない。

カイトと言えども、これ以上自分が女として傷つくことが耐えられなかった。

「そうなの?そんなにあいつのこと気に入ってたんだ。」

カイトはかつおのたたきを摘みながら言った。

「そうよ。あんたよりは100倍ましだわ。男前だし。礼儀正しいし。」

「ふぅん。」

カイトはそう言うと、店員さんを呼んで「もう一杯」とジョッキのお代わりを頼んだ。

「ミナミ先輩、気に入ってるんなら絶対すぐに行動起こさなくちゃダメですよ。」

ハルカの顔色が明るくなったように見えた。

「あれ?こないだあいつの携帯番号渡してやったのにまだ連絡してないのかよ。気に入ってんなら早くすればいいじゃん。」

「いいのよ。タイミングを見計らってるだけ。」

「何のタイミングだよ。」

「私だってこれ以上傷つきたくないからね。」

箸先を見つめていたカイトは、チラッとこちらに視線を向けた。

「・・・らしくねぇこと言うな。」

小さい声だったけど、ぶっきらぼうに言うカイトに無性に腹が立った。

「らしくないとは何よ。らしいって一体何??私らしいなんて、あんたにわかってもらいたくもないわよ!」

思わずテーブルをドンと叩いて、カイトに体を向けた。

カイトもまさかの反応に目を見開いて私を見た。

「ミナミ先輩、ちょっと落ち着いて。飲み過ぎだよ。」

ハルカがフォローを入れてくれる。

それすらも、今は受け入れられないほどの小さな自分になっていた。






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