ドラマ好きの何が悪い
映画も終わり、ストーリーの余韻をかみしめながらエンドロールを眺めていたら、急にカズエがむくっと体を起こした。

そして、周囲をキョロキョロと見回し、エンドロールを指さして、

「あれ?映画は?」

と尋ねた。

思わず、吹き出す。

「カズエ、ずっと寝てたよね。」

「えー?嘘でしょ?どうして起こしてくれなかったのー!」

カズエは落胆のあまり、頭を抱え込んでいる。

「だって、気持ちよさそうに寝てるんだもん。疲れてるのかなーって思って、寝かしといたの。」

「もー、意地悪なんだから。」

「意地悪じゃないよー。この映画、多分来年くらいにはテレビでやるって。ちょっと映画代はもったいなかったけどね。」

「ほんとよ-。主婦にとっては映画代も馬鹿にならないのよ。」

「そうだね、ごめんごめん。ランチ代くらいご馳走させて。私これでもお給料はそこそこもらってるから。」

「本当に?お言葉に甘えちゃおうかなぁ?」

カズエは急に機嫌がよくなり、ペロッと舌を出した。

昔からそういうところは変わらない。

愛嬌があって、憎めないキャラクターだった。

でも、突然思い切ったことをして周囲を驚かせる。

付き合ってる彼がいるのに、遠方の短大に進学決めちゃったり。

きっと旦那さんは旦那さんで苦労してるんだろうねぇ。

茶目っ気たっぷりのカズエの表情を見ながら尋ねた。

「ね、お昼何食べる?」

「そうねぇ、普段子供がいたらなかなかいけないとこ。」

「何がいい?私は何でもいいよ。」

「お寿司がいいかなぁ。回るやつじゃなくて、前で握ってくれるやつ。」

「ご馳走するって聞いた途端、気持ち大きくなってない?」

私は「もぉ」とカズエの腕を突きながら笑った。

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