ドラマ好きの何が悪い
「入社してから何となく気が合うその人と付き合うようになって、2年目の時だったかなぁ。彼に病魔が襲ったの。」

私は言いながら、だんだんと胸が苦しくなってきた。

最近、その話は誰ともしてなかった。

自分で言いながら、どうしてこんな話、シュンキにしちゃったんだろうって後悔する。

シュンキは『病魔』のところで急に笑顔が消えて表情が固まった。

「いわゆる難病でね。どうして彼がそんな病気にかからなくちゃなんないんだろうって、ずっと泣いてた。彼の方がずっと辛かっただろうけど、その時は彼を支えるっていうより、自分の気持ちをうまくコントロールできなくなってた。今でもそれはずっと後悔してるんだ。」

ふぅと息をゆっくりと吐いた。

シュンキはだまったまま私の言葉に耳を傾けている。

「彼は、病気が発覚して1年後に亡くなったの。」

彼が亡くなって、もう10年も経つのに、こんな話しただけで胸が苦しくてまた涙があふれてきそうになった。

あふれそうになった涙をぐっと堪えて続けた。

「あまりにも恋愛真っ只中で一番いい時に、ふと振り返った時にはもう彼は存在していなくて、そのこと自体受け入れられたのも随分経ってからだったわ。」

シュンキはうつむいたまま、何度も頷いた。

「ごめんね。こんな湿っぽい話して。でも、もう大丈夫なのよ。とりあえず、その彼との思い出が私にとっては忘れられない恋愛なの。」

「話してくれてありがとう。」

シュンキは静かにそう言った。

「ミナミさんがきちんと僕に大事な話聞かせてくれたんだから、僕もさっきの忘れられない話最後までしなくちゃね。」




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