黒い天使。
「勘当されちゃうかもなー」


ふと、声に出してしまった。

周りには幸せそうな夫婦や、お母さんばかり。
私みたいに沈んだ顔をした人間がここにいてはいけない。


「ねぇ」

ふと、声がした。

「あなたよ。そこの若いお嬢さん」

私じゃないだろうと思いながらも、振り返るとそこには私に微笑む私より年上のお姉さんがいた。


「わたし、ですか?」

「そうよ。あなた!」

「なんでしょう?」

「あなた、1人??」

「はい…」


話を聞くと、35才の女性で名前は井上涼子さん。
話していたらどんどん仲良くなれた。

「私ね、初めての子供なの」

「え?」

「あなた、堕ろそうとしてるのかなって思って。顔とか怖いわよ」

って微笑みながら言った。


「井上さん…」

「あら、涼子でいいわよー」

「涼子さん…私、彼に奥さんがいるって知らなかったんです」

「あー、なるほどね。でも、あなたのお腹にいるかもしれない子は罪はないのよねー」

「そうなんです…。もし勘当されても、私はこの子を産んであげたい。彼の子を」
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