社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
第一章
社内恋愛症候群 〜王子な後輩に癒される恋〜

恋は好きから始まる。
でも大人の恋は好きだけじゃ前に進めない。

第一章

私のスーツは戦闘服で、八センチのヒールはプライド。


毎朝早起きをして、髪もメイクもぬかりないように入社以来徹底してきた。

絵に描いたようなOL。

マンションの自室で出勤前の自分の姿を鏡に映し確認して、私はほっと安心した。

どこからどう見ても完璧に見えているはず。その自信が職場での私を守ってくれる。

「さて、今日も頑張ろう」

誰もいない部屋でひとり自分に話しかけて、いつもの時間に部屋を出た……のだけれど。

マンションを出てすぐに、ストッキングが伝線しているのに気が付いた。

ついてない……。でもこのまま出勤するわけにはいかない。

入社後初めてのボーナスで奮発して買った一生ものの腕時計を確認すると、ストッキングをはき替える時間ぐらいはありそうだ。

くるりと踵を返すと、早足で部屋へと戻った。


着替えをすませた私が満員電車に揺られて向かうのは日芝電器株式会社——私、蓮井貴和子(はすいきわこ)の職場だ。業界一位の大会社に新卒で入社して今年で九年目。

今年営業課から営業企画部に異動になり四ヶ月とちょっと、まだすべての仕事を把握はしてないけれど、長い社歴と営業経験が慣れない仕事をカバーしてくれていた。

八月のクーラーが機能しているのかどうか怪しいくらいの息苦しい電車から降りても、ホームも人でいっぱいだ。しかしこの人混みを上手に歩くのも九年もこの駅を利用している私にとっては、なんてことない。
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