社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
「それに、今日はなんだか恥ずかしいところ見られてばかりだね」

考えてみれば二度も失敗の現場を見られている。面目ない。

「恥ずかしくなんかないですよ。いつもの蓮井さんもいいですけれど、オレは今日の蓮井さんもいいと思います」

曇りのないさわやかな顔で言われて、思わず顔が赤くなりそうになる。必死で隠している自分のダメな部分を見て「いい」と言ってもらったのは、いつぶりだろうか。

ふとどうでもいいことが頭をよぎり、頭を振ってはがれそうな仮面取り戻す。

「いつもは本当にこんなことないの。次からは迷惑かけないようにするから」

印刷し終わった書類をまとめ、もう一度若林くんを見る。

「ありがとう。お疲れ様です」

お礼を言ってコピーブースを出ようと歩き出した。

「待ってください」

気まずいから早く行きたいのに、呼び止められて足を止めた。

「どうかしたの?」

振り返ってみた若林くんの手には、資料の原本が握られていた。

「これ、忘れてますよ」

「あっ……」

バツの悪い顔の私をみて若林くんが、たまらないといったようにクスクスと笑いだした。

「本当に私、今日はどうしたんだろう。嫌になるわ。ごめんね」

赤くなった顔で、若林くんから書類をうけとった。

「謝らないでください。さっきも言いましたけど、特別な蓮井さんを見られてオレは嬉しいですから」

「……そう」

彼を見ると、本当に嬉しそうに屈託なく笑っている。

こんな失敗続きの私を見てなにが楽しいって言うんだろう。
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