社内恋愛症候群～小悪魔な後輩君に翻弄されて～

電話やメールもない。そもそも密に連絡を取り合うような仲ではないのだから、普通のことなんだけど。

一度だけ私から電話をかけようと思ったことがあった。

電車のホームで彼が言いかけたことが気になったからだ。

けれど、スマホのディスプレイに若林くんの連絡先を呼び出したあと、すぐにやめた。

あのあと、彼からなにも聞いてこないのだ。

すでに解決したかもしれない話を蒸し返すのもなんか違うような気がする。

結局私は、彼に会うことも話をすることもなく日々をすごしていたのだ。

八年ぶりの恋に戸惑い、けれど募っていく思いを楽しんでいた。

デスクに戻って、さっきやりかけていた資料の作成に取りかかった。