社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
河原さんの荷物を持って、医務室へ駆けつけると、すでに彼女はベッドへと寝かされていた。
まだ意識はないようで、青白い顔が痛々しい。
「ほら、男性陣はカーテンの外で待ってて」
私は、心配そうに身守る衣川くんと若林くんを追い出すと、ベッドの傍の椅子に腰かけた。
さっき、少し辛そうにしていたときに声をかけてあげればよかった。
後悔しながら、少し乱れていた布団をかけなおして、彼女が目覚めるのを待った。
誰もなにも話をしなかった。三十分ほど時間が経った頃、河原さんが身じろぎをしながら目を覚ます。
「気がついた?」
目を開けた彼女に問いかける。
「貴和子さん……」
「よかった。デスクで倒れたの覚えてる?」
目覚めたばかりの頭で、記憶を手繰り寄せているようだ。
「ここのところずっと無理していたせいよ。ちょっと熱もあるみたいだし」
「ご心配おかけしてすみませんでした」
まだ青いままの顔で、小さな声で謝罪の言葉を口にした。
「それは、別に構わないけど立てる? 荷物はここに取ってきたんだけど」
「ありがとうございます」
起き上ろうとする河原さんを支えていると、カーテンをあけて若林くんが近づいてきた。
「疲れてたみたいなのに、無理に仕事頼んですみませんでした。全然気がつかなくて」
申し訳無さそうに頭を下げた。
それに対して「大丈夫」と答える河原さん。しかし、話に割り込んできた衣川くんの表情は硬い。