社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
「体調管理は社会人の基本だ。無理して仕事をしても結果がこれならばなんにもならない」

「はい。申し訳ありません」

こんなときにわざわざ、そんな言い方しなくてもいいのに。

河原さんがますます小さく肩を丸める姿を見て、かわいそうだ。

そんなふたりの様子を見て、小さなため息をついた。

私も人のことあいえないけれど、衣川くんはもっと周りに優しくするべきだと思う。

結局河原さんは、衣川くんに連れられていった。

きっとタクシーに乗るところまで、彼は見届けるだろう。

結局医務室には、私と若林くんが残る。

いつもなら、彼から話題が振られてふたりでいて沈黙が続くことなんてめったにない。

それなのに、なぜか今日は口を開こうとせずに、黙々と医務室の片づけを行っていた。

「河原さん……大丈夫かな?」

沈黙が耐えきれずに、声に出してみる。

「そうですね」

素っ気ない返事に、少なからず傷ついた。

もっと色々話をしたいと思っているのは、どうやら私だけらしい。

「もしかして、若林くんも疲れてるの? だったら……」

今日はもう一緒に帰らない?

そう告げるつもりだった。自分から彼を初めて誘う言葉だった、けれどそれは彼の言葉にかき消されてしまう。

「別に疲れてませんよ。それよりも蓮井さんの方が、大変なんじゃないですか? 衣川課長と河原さんふたりで帰っちゃいましたよ」

刺々しい言い方がいつもの若林くんらしくない。

私は胸の奥から湧き出るような、不安を隠して返事をした。
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