社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
「いや、ちょっと今のは忘れて」

「忘れません。このスカートもオレの為だって思ってもいいんですよね?」

それは、デパートで衝動買いしたスカートだった。確かに彼のことを思って買ったけれど、本人に指摘されると恥ずかしい。

「いや、これは違うの」

「違わないですよね? そんな努力して、これ以上オレを好きにさせてどうするつもりですか? 気が狂ったら、責任とってください」

若林くんの手が伸びてきて、優しく私の髪を梳いた。

「そ、それにねっ」

「まだあるんですか? この際全部吐き出してください」

クスクスと笑いう彼だったが、私はどうしてもきちんと伝えておきたいことがあった。

「私、若林くんより七つも上なの。簡単にくっついたり離れたりできない歳なんだよ」

私の声が沈む。彼にはいっときの感情だけで流されて欲しくない。

今この状況でこういう話をするのはずるいのかもしれない。けれど今しておかないと、いけない話だ。

引き返せなくなる前に——いや、もうとっくに引き返せないのだけど——きちんと話をしておきたかった。

「それって、オレから離れないってことでいいんですよね?」

「若林くん……」

「オレ、簡単に貴和子さんのこと手放すつもりありませんから」

彼の言葉が、私の身を震わせた。
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