社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~

その週の土曜日。

仕事が休みの日だからといって、寝坊することはほとんどない。

いつもよりほんの少し遅く起きて、軽い食事をとると平日に行き届かない家事をこなす。

それも午前中には終わってしまうので、午後は読みかけの文庫本を持ってカフェにでかけたり、映画をみたり、ふらふらと買い物を楽しんだりと。週末には私はひとり時間を楽しんでいた。

今日は珍しく朝から外出していた。朝一番に予約しているいつものネイルサロンへと向かっていた。

駅から出ると朝の九時半とはいえ、蝉の声がそこかしこから聞こえてきた。

私はお気に入りの日傘に、普段は身に着けないミント色のサラッとした肌触りのいいワンピースにいつもよりも少し低めのヒールの白いサンダルを履いて、まだ人通りの少ない街を歩いていた。

今日も一日晴れの予報だ。これからどんどん温度があがっていくのだろうけれど、まだ朝の清々しい空気が流れる街中を歩くのは結構気分がいい。

少し奥まった通りの角に到着すると、ガラスの扉を開いた。

「いらっしゃいませ、蓮井様。お待ちしておりました」

「朝早い時間からすみません、仁美(ひとみ)さん」

私を柔らかい笑顔で迎えてくれたのは、このサロンのネイリストだ。と、いってもご自身で経営されているので、オーナーでもある。
< 12 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop