社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
「颯真、お会計お願いできる?」
カウンターで下を向いて作業していた男性に仁美さんが声をかけた。その声を聞いて男性が顔をあげた。
「えっ……」
思わず声をあげて固まってしまう。そこには驚いた顔の若林くんがいたのだ。
ふたりの顔を仁美さんが見比べて、状況を把握しようとしていた。
「まさかとは思ったんですけど……、本人だったんですね」
先に口を開いたのは、若林くんだった。私はなにか言おうとしたけれど、何を言えばいいのかわからないまま突っ立っていた。
「声、似てるなぁって思ってたんですよ」
声が似てる……そう判断したということは、こちらの会話が筒抜けだったということだ。
ふと、どんな話をしていたのか思い出して、頭を抱えた。
しかし、いつまでもここに立っているわけにはいかない。私は感情を表に出さないようにして仁美さんに視線をむけた……なるべく視界に若林くんを入れないようにして。
「まさか、仁美さんの弟さんが若林くんだったなんて、会社が一緒なんです。世間ってせまいですね」
顔が引きつっていないか心配になる。なんとか不自然にならないようにふるまった。
「本当にびっくりしました。颯真までお世話になってるなんて」
三人とも驚いてはいたけれど、気まずい思いをしているのは私が一番だろう。同僚にあまり聞かれたくない話を聞かれたのだから。
カウンターで下を向いて作業していた男性に仁美さんが声をかけた。その声を聞いて男性が顔をあげた。
「えっ……」
思わず声をあげて固まってしまう。そこには驚いた顔の若林くんがいたのだ。
ふたりの顔を仁美さんが見比べて、状況を把握しようとしていた。
「まさかとは思ったんですけど……、本人だったんですね」
先に口を開いたのは、若林くんだった。私はなにか言おうとしたけれど、何を言えばいいのかわからないまま突っ立っていた。
「声、似てるなぁって思ってたんですよ」
声が似てる……そう判断したということは、こちらの会話が筒抜けだったということだ。
ふと、どんな話をしていたのか思い出して、頭を抱えた。
しかし、いつまでもここに立っているわけにはいかない。私は感情を表に出さないようにして仁美さんに視線をむけた……なるべく視界に若林くんを入れないようにして。
「まさか、仁美さんの弟さんが若林くんだったなんて、会社が一緒なんです。世間ってせまいですね」
顔が引きつっていないか心配になる。なんとか不自然にならないようにふるまった。
「本当にびっくりしました。颯真までお世話になってるなんて」
三人とも驚いてはいたけれど、気まずい思いをしているのは私が一番だろう。同僚にあまり聞かれたくない話を聞かれたのだから。