社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
改札を抜けて、日芝本社ビルまでの道のりを、今日の予定を脳内で整理しながら歩いた。

——今月の営業施策について、四国支社から問い合わせがあったんだっけ。あれはたしかイレギュラー対応だから深沢部長にご相談してもらった方がいいな。それから……えーっと。

会社に到着して、IDカードをかざしてセキュリティゲートを抜け、エレベーターへと向かう。

エレベーターを待つ人たちの後ろに並ぶと「おはようございます」と声をかけられた。

彼は確か……営業二課の若林颯真(わかばやしそうま)くんだ。

「おはよう」

私が挨拶を返すと、にっこりと笑った。

同じように満員電車に揺られて、すでに蝉のうるさく鳴くのを聞きながら駅からここまで歩いてきたはずなのに、なんてさわやかな笑顔なんだろう。

社内の女子社員たちが騒ぐのも無理はない。

きちんと切りそろえられた清潔感のあるヘアースタイル。
二重の形のいい目元は彼の甘い雰囲気を醸し出すのに一役やっている。笑うと見える白い歯が印象的だ。

身のこなしも若い男の子にしてはスマートなのに嫌味がないと……もっぱらの噂だ。
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