社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
「オムライス好きですか?」

「うん。あの、でも……お店は大丈夫なの?」

「もともと、午前中だけって話だったんです。だから平気ですよ。さぁ、行きましょう」

いつかのようにそっと背中に手を添えられて、歩き始めた。それまで迷っていたはずなのになぜか彼の隣を歩いている。

「よかった、蓮井さんもオムライスが好きなら、もしかしたら食べたことあるかもしれないですね。オレ、時々無性に食べたくなるんですよね」

「そうなんだ。どこのお店?」

思わず返事をしてしまった。これでは、行かないなんて今さら言いだせない。

まぁ、いいか。どうせどこかでランチして帰るつもりだったし。

相手が文庫本から、若林くんに変わっただけだ。

なんとなく、彼のペースに巻き込まれている気もしないでもないけど、ただ食事をするだけだ。頑なに拒否するのもなんだか違う気がする。

「このすぐ近くですから。この時間だからもしかしたら、並ぶかもしれないな。時間大丈夫ですか?」

「うん。特に予定はないけど」

「よかった。ゆっくりできますね」

白い歯をみせて笑う彼は、私に同意をもとめているようだ。

「そうだね」

そう返事をしたけれど……私、ゆっくりするつもりなの? 自分に問いかけずにはいられない。
< 21 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop