社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
恋をしていないせいで、こんな症状が現れるなんて。

なんだかバカらしくて、フッと笑った私を若林くんが不思議そうに見ていた。

「なんでもないの」

「そうですか、もう次ですね」

若林くんがそう言った途端、店の扉がベルの音を響かせて開いた。

「次にお待ちの方、どうぞ」

店の中から顔を覗かせた店員さんに、席に案内してもらう。

二人掛けの窓際の席は、明るくてテーブルの上には小さなヒマワリが一輪生けられていた。

私の前に座った若林くんは、さっと私の方にメニューを差し出してくれる。

「「蓮井さんは、なににしますか?」

メニューには数種類のオムライスや、エビフライ、ビーフシチューなど洋食屋さんのおなじみのメニューが並んでいた。優柔不断な私は決めかねて、若林くんの意見を聞く。

「どれもおいしそうで決められない。若林くんは何にするの?」

「オレはここに来ると、いつも同じものを食べるんですよ」

彼が指さした先には、オムライスと同じプレートに大きなエビフライが乗っていた。

「おいしそう。私も同じのにする。いつも食べるくらいおいしいんだよね?」

「はい。おすすめですよ。それにオレ、これって決めたら一途なんで」

話ながら手を挙げた若林くんが、オーダーを取りに来た店員さんにふたり分注文してくれる。
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