社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
「そんな、顔しないでください。父親のことはあまり覚えてないせいか、そのことで寂しいと思ったことはあまりないですから。それに、そのおかげで、蓮井さんと食事するときに嫌な思いさせないで済んだなら、よかったなぁって思います」

不意打ちにそんなことを言われて、恥ずかしくて思わず顔が赤くなる。

若林くんは今日何度、私の顔を赤くするつもりなのだろうか。

水滴のついたグラスを持ち、すでに氷のとけた水を飲んで自分の気持ちを落ち着かせる。

「蓮井さんは——」

「え、うん」

今度は彼から話題がふられた。

「去年までは営業部にいたんですよね?」

「うん。二課にいたの。若林くんとは入れ替わりよ」

スプーンを持ち直してオムライスをスプーンに乗せながら答えた。

「それで、営業のフロアに来られたときすっとその場になじむんですね」

「そう……かな? 自分ではわからないけど。まぁ、気安さはあるかもね」

たしかに、古巣である営業部は他の部署より出入りしやすい。

「……衣川課長とは同期だって聞いたんですけど」

「そうよ。私たちの年は採用がすごく少なかったから数少ない同期なの」

「だから、あんなに仲がいいんですか?」

若林くんの瞳が一瞬曇ったのは気のせいだろうか?

少し気になったけれど、本当にわずかだったし今はもう元の柔らかい表情だ。
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