社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
もちろん既存客の売上も新人の中ではナンバーワン。

本社に異動してきて四ヶ月。その間も二年目とは思えない活躍ぶりだ。

営業企画部でも日報ベースでの売上の数字を把握しているので、私もそれを十分知っている。

「どう? 本社は大変でしょう」

「そうですね。でも、見習うべき人も多ですしいい刺激になっていると思います」

前向きな言葉が帰って来た。彼の表情から今、仕事が楽しいと思っているのがわかる。

「そっか……確かに新しい場所は仕事に刺激を与えてくれるわよね」

実際に私自身がそうだった。今年の四月、急に営業企画部へと異動と言われて初めは驚いたし、今まで営業として築いてきたキャリアの方向性が変わってくることに不安も覚えた。

けれど実際に今の仕事をやってみると、とてもやりがいを感じられたし営業として積んできたキャリアや感覚がいかせる業務だと思えた。

「営業に未練はないですか?」

「ん? そうね、ないって言えばウソになるんだろうけど、でも私今の仕事も好きなのよ。それに営業ではこれ以上、上には行けそうにないから」

「出世ってことですか?」

若林くんが気遣うように聞いてきた。聞きづらい話題だからそうなるのもわかるけど。

「うん、別に会社がどうこうってわけじゃないの。今の深沢部長だったら性差や年齢関係なしに、能力をみてくれると思う。これはね、自分の問題なの」

「それって、衣川課長の昇進と関係あるんですか?」

「衣川くん? どうしてそこで名前が出るの?」

不思議に思ったが、目の前の彼が答えを乞う目を私に向けた。
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