社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
「まぁ、ないって言えばウソになるかな。でも、ある意味彼の昇進で自分のこの先のヴィジョンを描けたからよかったんだと思う」

衣川くんが仕事ができるのは、私だって理解していた。けれど同期がどんどん出世していく様を見て羨ましいと思う反面、自分に同じことができるとは思えなかった。

なんか……若林くんに聞かれるままに色々話しちゃったな。

会社の人になんか——滝本さんや河原さんにだって——こんなこと話したことなかったのに。

「さぁ、私のことはいいから冷めちゃわないうちに、さっさと食べよう」

まだ何か聞きたそうな顔をしていた若林くんだったけれど、私はこの話を少し強引に終わらせた。

それからは、当たりさわりのない話をした。

さっさと私よりもひと回り大きいオムライスをあっという間に食べ終わった若林くんが「ゆっくりたべてください」と言って、私に色々な話題をふってきた。

気がつけば、言われるまま随分プライベートなことも話してしまった気がする。きっと彼が聞き上手なせいだ。
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