社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
あぁ……またはじまっちゃうんだろうな。

「ダメ」

滝本さんは成瀬くんの方を一度も見ずに、不機嫌そうに一言そう告げた。

やっぱり……。

滝本さんは成瀬くんと同期だ。入社して五年、ふたりともずっと本社で営業をやり続けている

。同期同志仲がいいのは、いいのだろうけど……ふたりが並ぶと言葉の応酬がはじまるのだ。

今も目の前で、ふたりギャーギャーとやりあっている姿を見ると“喧嘩するほど仲がいい”の手本のようだ。

しかし、意地っ張りなふたり。いささかエスカレートしすぎることが多い。

滝本さんの顔が本当に曇る前に、そろそろふたりの言い合いを止める時だ。

「はいはい、もうおしまい。あなたたちふたりいつになったら、仲良くできるの?」

箸を置いて静止すると、ふたりが不服そうにいったん言い合いを止めた。

しかしまた言い合いを始めてしまったふたり、結局滝本さんが席を立ってしまう。

河原さんにお金を渡して出て行ってしまった滝本さんの後を、急いで食事を終わらせた成瀬くんが追った。

「本当にどうしてあのふたりは、いつもああなんだろうね」

「そうですね……」

周りからみているとあのふたりの互いの気持ちがわかるのに、当の本人たちがまったく気が付いてないみたいだ。
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