社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
「おはようございます」
四階にある営業企画部のフロアに到着したのは、始業開始五分前。正直褒められた時間じゃない。
私はフロアに向かって挨拶を済ませると、すぐに自分のデスクに座り、パソコンの電源を入れた。
「蓮井さんがこんなにギリギリだなんて、珍しいね」
直属の上司である営業企画部の山崎(やまざき)部長がデスクに座ったまま声をかけてきた。
「おはようございます。すみません、ちょっと色々とあって」
「いや、いつも完璧な君だから、気になっただけだよ。遅刻じゃないんだから気にしないでいいよ」
目尻に皺を寄せてニコリと笑うと、さっきまでやっていた仕事の続きをはじめた。
年配だけれど、ロマンスグレーの髪をきちん整えていて、奥さまのセレクトだろうかいつも趣味の良いネクタイをしている山崎部長は、四月に異動してきたばかりの私の意見もしっかりと耳を傾けてくれる。
入社して今年で九年。社歴は長いけれどそれまでとは違う部署にいきなり異動になった私は、はっきりいってまだ戦力になりきれていない。いわば半人前だ。
それでも、わからないことはきちんと指導してくれ、やれそうな仕事はどんどんまわしてくれた。
ここ、営業企画部の仕事は多岐にわたる。販売促進のための施策を考えたり、営業担当の研修、また社内コンテストの企画をして社員の士気を高めたりいわば……営業促進のために何でもする部署だ。
覚えることもたくさんあったが、私は新しく配属されたこの部署の仕事を気に入っていた。
立ち上がったパソコンの画面にパスワードを入力して立ち上げると、手帳を開いて業務の確認さっと確認してすぐに仕事に取り掛かった。