社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~

その日の仕事は、朝の失敗が尾を引く形でうまくいかないことが多かった。大きなミスではないものの、そんな自分に嫌気がさしてデスクで小さなため息をついた。

極めつけは気分転換に……と買って出たコピーをはじめてすぐに、コピー機がストライキを起こして動かなくなった。

総務に連絡してコピー機のメンテナンス会社に連絡をしてもらったが、修理に来てくれるのは明日になるらしい。

それまでは、他の部署のコピー機を借りないといけない。

……仕方ない、古巣にお世話になるか。

私は資料を持つと「営業部に行ってきます」と三木さんに伝えて席をたった。

私は部屋をでると、階段を使って二階上の六階を目指した。そこは去年まで私がいた営業部があるフロアだ。

顔を覗かせると、すぐに一課の営業事務の担当である、河原(かわはら)さんがこちらに気付き笑顔をみせてくれた。

彼女、河原朔乃(さくの)さんは、入社して三年目のよく気が付く子だ。いつもさりげなく周りへの気遣いを見せていて、笑顔を絶やさない。同性の私でも癒されるのだから、男性社員ならきっとひとたまりもないだろう。

社内では親しい人間はあまり多くない。

それでも彼女と、営業担当の滝本(たきもと)さん——今は外出していていないようだけど——滝本汐里(しおり)さんは、私にとって職場で心を許せる貴重な存在だ。

河原さんに軽く笑顔を返していると、奥の席に座る衣川(きぬがわ)くんと目があった。
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