社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
目を一瞬細めた若林くんは、フッと口の端を軽くあげて笑った。今までにみたことのない表情に私の喉が、ヒュウと音を立てた。
「貴和子さんは、貴和子さんじゃないですか?」
彼の挑むような視線に、身震いしてしまう。慌てて私は、両手で自分の体を抱きしめると、声が震えないようにして言い返した。
「そんな風に呼ばれる仲じゃないはずだわ」
「セックスしたのに?」
「若林くんっ!」
彼のあけすけな言い方に、大きな声を出してしまう。
けれど彼はまったく答えていないようで、私から鋭い視線を一切外さない。
その鋭さから、彼がどのくらい怒っているのかがわかる。けれど私は、それに気がつかないふりをした。
「そういう言い方、やめて……」
「事実しか、言ってません」
「そうだとしても……」
「どうかしましたか?」
背中の方から、声が聞こえて振り返る。そこにはさっきガラス越しに挨拶をした守衛さんが立っていた。
「なんでもないです」
私が答えると、守衛さんは若林くんの方をチラリとみた。彼は小さく頷くだけだった。
「大きな声が聞こえたから来てみたんですが……。なんでもないならかまいません」
しかし、その表情からは「ここで騒ぐな」という声が感じ取れた。
私がエレベーターのボタンを押すと、守衛さんは納得したように戻って行った。
「貴和子さん——」
「ここじゃ迷惑になるわ。誰に見られるかわからないし」
「貴和子さんは、貴和子さんじゃないですか?」
彼の挑むような視線に、身震いしてしまう。慌てて私は、両手で自分の体を抱きしめると、声が震えないようにして言い返した。
「そんな風に呼ばれる仲じゃないはずだわ」
「セックスしたのに?」
「若林くんっ!」
彼のあけすけな言い方に、大きな声を出してしまう。
けれど彼はまったく答えていないようで、私から鋭い視線を一切外さない。
その鋭さから、彼がどのくらい怒っているのかがわかる。けれど私は、それに気がつかないふりをした。
「そういう言い方、やめて……」
「事実しか、言ってません」
「そうだとしても……」
「どうかしましたか?」
背中の方から、声が聞こえて振り返る。そこにはさっきガラス越しに挨拶をした守衛さんが立っていた。
「なんでもないです」
私が答えると、守衛さんは若林くんの方をチラリとみた。彼は小さく頷くだけだった。
「大きな声が聞こえたから来てみたんですが……。なんでもないならかまいません」
しかし、その表情からは「ここで騒ぐな」という声が感じ取れた。
私がエレベーターのボタンを押すと、守衛さんは納得したように戻って行った。
「貴和子さん——」
「ここじゃ迷惑になるわ。誰に見られるかわからないし」