社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
それにいつか彼に嫉妬してしまう。誰からも必要とされる彼は、私には贅沢すぎる。

ぐっと奥歯を噛んで、胸のざわめきを押さえつける。

真上を見上げて、空を見る。秋の高い空が目に入った。深く呼吸を繰り返して、落着きを取り戻す。

いつまでもここにいる訳にはいかない。

私はコートのポケットに手を入れると、出口に向かって歩き始めた。

「ん……?」

いつもなにも入れてないポケットに、なにか入ってる?

私はそれをポケットから取り出す。

「これって」

それは綺麗に折りたたまれた一万円札二枚だった。

あの日、私がホテルの部屋に黙って置いきた金額と同じ。

私はそれを見つめると、もう一度空を見上げて自分を落ちつけた。

ダメよ、絶対。彼のためにも、私のためにもならないんだから。

そうは思うけれど、心の中の彼への思いは簡単に消えてくれなかった。
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