社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
あれからいつもと変わらない日々の中のはずなのに、虚無感につつまれる日が続いている。
仕事もいつもと変わらずやっている。
誰にも必要とされていなくても、私は仕事が好きなんだから。自分に言い聞かせるようにしているけれど、やっぱりどこかむなしかった。
ため息をつくのが日常になってきたころ。その日も食堂でサバの味噌煮を前に、ため息を漏らしていた。
「貴和子さん、どうかしたんですか?」
「え?」
顔をあげると心配そうに、私をみている滝本さんと目が合った。
「ここ最近、元気ないですね」
「ん、大丈夫。ちょっと疲れてるだけだから」
いけない。周りまで暗い雰囲気にするなんて。
私は笑顔を作って、食事を再開した。
「あんまり無理しないでくださいね。今度朔ちゃん誘ってパーッと飲みに行きましょう。おいしいオイスターバー見つけたんです」
「それ、俺も行きたい」
声のした方を見ると、成瀬くんが大盛りのカレーライスを持って立っていた。
なにもいわずに、向かいに座っている滝本さんの隣に座る。
「なに勝手に座ってるのよ」
唇を尖らせて滝本さんが、成瀬くんを不満そうに睨む。
「いいじゃんか、別に。若林誘ったけど、断られた」
「そうなの?」
両手を合わせて「いただきます」と言った成瀬くんは、スプーン一杯にカレーをのせて口に運んだ。