社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
「なんかアイツ、さぁ」

「ちょ、汚い。食べるかしゃべるかどっちかにして」

眉をひそめた滝本さんだったが、私は早く成瀬くんの話が聞きたかった。

あれから若林くんとは、何もない。一度食事に誘われたけれど、断った。

返信の必要のないメールは放置した。そうすることで、自分の中の彼を追い出すことができるような気がしたからだ。

実際はまったく無駄で、こうやって人の口から彼の名前が出ると、反応してしまう。

あきれつつも、私は成瀬くんの話に耳を傾けた。

「最近ずっと、合田さんといない?」

合田さんの名前が出たせいか、滝本さんが眉を寄せた。

「たしかに、最近多い気がするけど」

別に、同じ課なのだから一緒に行動することもあるだろう。おかしなことなんてない。

「現に今も、営業企画に出す資料、合田さんすっかり忘れてたみたいでさ」

それは私が担当の仕事だ。確かに今日の午前中で締めきっている。

「もしかして、若林くんが手伝ってるの?」

呆れたように滝本さんは、声をあげた。

それにカレーを頬張りながら、成瀬くんが頷く。

「正直、忘れてたのは合田さんなんだから、手伝う必要なんてないのにさ。だからなんか下心があるんじゃないのかって思って」

成瀬くんの言葉に、胸がギュッとしぼられた気がして、手を当てる。
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