普通の人間の恋
急いで私と彼と子供が住んでいた家へ向かった。
もちろんすごい人で溢れていたので、警察の元へも行けなかった。
それでも何とか警察のもとへ辿り着いた。
「すいません!し、死んでいたのは男の人だけですか・・?」
「・・あなたはこの男性の身内の人?」
「・・・元旦那です・・」
「・・そうですか・・・。お亡くなりになられたのは二人です・・。」
私は泣き崩れた。
彼は一人では何もできない人だったから、子供と一緒に死んだ。
ショックのあまり立てない。何もできなかった。
これからの人生はどうすればいいのだろう。
ああ、私も一人では何もできない人間だったんだ。
「ママ!」
聞き覚えのある声だった。
後ろを振り返ってみると我が子が走ってこちらに向かっていた。
良かった、生きてた。
子供は生きていた。
「危ない!」
衝撃的な音と共に走っていた我が子は目の前から消え、
大型トラックの前で赤い液体を流しながらピクリとも動かない。
目の前が真っ白になる。
警察によるとまず亡くなっていた二人は彼と、彼の母親だった。
彼の父もギャンブルで抱えた多額な借金で自殺していて、
私と離婚をしたことがキッカケで、また新たな莫大な借金が舞い降りてきたのだ。
それに耐え切れなくなり、彼の母は自殺を図った。
そして我が子は即死だった。
子供が外に出ていった理由は彼が最後に顔を見ようと思い、外に連れ出したんだろうという推測だった。
私も結局一人では生きていけない人間。
手首を切って、この世から去った。